1.住宅展示場と個人情報
「家を建てたい。」と思ったときあなたはまずどうしますか?
多くの方々は「じゃあ今度の休みに近くの○○住宅展示場にいってみようか!」とお考えになられると思います。その前日や当日の朝、家族でテレビを見ていたら「劇的空間ビフォーアフター」や「渡邉篤志の建物探訪」はたまた「完成ドリームハウス」などを目にされる場合があり、しばしその番組で紹介された建物に見入ることがあると思います。
番組で紹介される建物の多くは首都圏の物件であり、すべてが庶民的なデザインではないことも事実です。またテレビという独特の媒体であるため建築家の姿がかなり誇張して報じられているのです。
「ああいうのもいいと思うんだけど、建築家なんか知らないし現実味がないよなあ」と思い、○○住宅展示場に家族総出でお出かけになるのです。
住宅展示場では、アンパンマンショーや似顔絵コーナー、特産品コーナーとイベントだらけ、思わず「無料!!」の文字に目を止められます。ただご注意ください。「アンケートにご記入の上引き換え券をお渡しします」とありませんか?
そのアンケートの内容はというと、「住所・氏名・職業・家族構成・年収・土地の有無・建てたい時期・予算・・・・・・・」(この個人情報は・・・・・・のみに利用させていただきます。)
住宅展示場自体の経営の基盤は出展している住宅メーカーです。もちろんそのアンケートの情報の入手の権限が各住宅メーカーにはあるのです。ましてや各メーカーの建物玄関でもさらなるアンケート攻勢がはじまります。こうして各住宅メーカーはみなさんの個人情報を入手することが営業戦略の一番手になっているのです。
与えられた個人情報は各メーカーに保存登録され、インターネットで名前検索されます。
「えーっ。あのひと病院の経営者じゃん!」とか「○○会社の役員だわ」と狙いが定められます。この方法は住宅展示場だけでなく、無料住宅相談会や資金相談会、住宅雑誌の資料請求などでもおこなわれることのようです。
私も住宅展示場や完成見学会に足を運ぶときもたまにありますが、名前や住所検索されると一発で身分がバレテしまいますので、どうしても見たい場合は、建築関係者であるが参考にみてもいいか?をお聞きした上でみせてもらいます。
住宅展示場はきらびやかな照明器具と豪華な家具やカーテン、大画面テレビが配置され一見「わーすごい」と誰もが目を奪われます。部屋自体も結構大きいのですが、ベットなどは少し小さめのものを配置させ、より広くみせようとデザインされています。逆に家具やカーテンがなければ何のこともないただの部屋になるのが皆さんに理解できますか?
業界では住宅展示場のことを「大人のディズニーランド」といっています。
2,注文住宅の依頼先
注文住宅を頼むのはどういう方法があるかご存知でしょうか?
@ハウスメーカー 全国規模(セキ○イハウス・ミサ○ホーム・へーベ○ハウス・住友林○・アキュ○ホーム・エ○クホーム・アイ○ルホーム・タマホー○・・・・・)
Aハウスメーカー 広島地元(トータ○・創建○ーム・山根木○・イワ○・共○ハウジング・・・)
B地元工務店 住宅展示場を持たない社員数10人程度までの工務店
C一級建築士事務所をもつ地元工務店や住宅メーカー(自社設計・自社施工)
D独立系の設計事務所 いわゆる建築家 (得意分野が分かれます)
(設計事務所などの下積み期間を経て、センスと知識を持って真に建築を愛する精神で独り立ち)
@ABCは設計と同時に施工(工事)も請け負う。
(契約形態は「工事請負契約」「売買契約」「工事契約」となります)
Dの場合は 建て主との間で、設計と監理を依頼されます。
(契約形態は「設計監理委託契約」となります)
よくわかりにくいと思いますが、Dの場合のみ「設計監理」と「施工」を分離した第3者的立場の専門家をあなた方が建築用心棒的に雇いコスト管理や品質管理デザイン管理を行なうような状況になるのです。
これが建築家の家づくりの基本なのです。
工務店やハウスメーカーは設計と同時に工事も請け負いますが、請負価格に占める割合としては工事のほうが圧倒的に大きくなりますので、設計と施工のどちらが「主」でどちらが「従」かといえば、程度の差こそあれ会社の利益のための工事が主とならざるを得ません。
あらかじめ規格が決められているハウスメーカーの家はもちろんのこと、工務店における設計も、その工務店のいつものデザイン、いつもの構造材料、いつもの仕上材料、いつもの造り方に多かれ少なかれ左右され、純粋に施主のための設計を突き進めることには限界があります。
よって提案力に欠け、お客さんに指摘された図面の部分のみを修正し、「思いどおりの家」と間取りや見かけの部分だけで自由設計だといいはるのです。
もちろんすばらしい提案をするメーカーもいますが、多くは設計事務所に下請けとして提案書を作ってもらい提案力を誇示してきます。下請けで使われた設計事務所は、相手の見えない設計、計画と確認申請図までのお金で監理は行なわない、ハウスメーカーから雇われた立場。と、ある意味、契約のために利用された状況にもなりかねません。(実際私自身も、過去にこういった立場で協力した時代もありましたが、結果的にいい建物造りにはなっていません。)
一方、建築家は施工を請け負わない純粋な住宅設計者として、また業者との利害関係や規格、施工の都合とを切り離して、依頼者の希望を熟知した設計図を描くことだけに専念することができます。
この違いは、本質的に大きな結果をもたらします。
それぞれのご家族のライフスタイルに合わせてゼロから設計した家は、そのご家族にとってこれ以上住みやすいものはなく、
まさに「肌にしっくりとなじむ家」、「かゆいところに手が届く家」と言うことができます。
ただしここで注意したい点があります。建築家とはいってもあくまでも自称的なネーミングです。
売名行為的に「私は建築家です」といった設計者もたくさんいます。
本来、建築家と呼ばれる人々というのは独自の信念をもってセンスや技術・知識をそのクライアントや社会に喜ばれるための建物を提供でき、総合監修のできる設計者であると思います。
ですから、基本的にはクライアントからの委託のみで設計事務所の運営をおこなっていることが前提です。しかし、多くの自称建築家は「食えない、仕事がない」とハウスメーカーや工務店の下請け図面を書いて食いつないでいる方々も多く存在するのです。ひどい話になると施工業者と裏でつながっていることも少なくはないのです。
出会った建築家(自称)に、ここ数年間の実績、考え方や施工業者の選定方法などをよく聞くことであなたに合った専門家と出会うことが出来るでしょう。
また、もうひとつ建築家の役割として工事監理があります。
工事監理とは、建て主に許可を得た設計図面どおりに工事がされているかを確認する作業です。
工事監理者は法律で決められた役割ですので、ハウスメーカーや工務店で建てる場合にも必ず任命されますが、ハウスメーカーや工務店の場合は社内で工事監理者を任命する場合がほとんどですので、自社で自社を監理することになり、正常なチェック機能は働きません。
あくまでも その会社の良心の範囲において監理する、ということになります。
素人の方がハウスメーカーや工務店に「カンリはきちんとされるのですか?」と確認されたとしましょう。カンリという言葉は「監理」と「管理」があり意味合いが全く異なるのです。彼らが言うカンリとは、現場監督による管理であり、これは工事現場の材料や職人さん工程が段取りよくまわっているかを見ていく立場が主であり、設計者と施主が打合せした内容が現場に的確に反映されているかとか、建築基準法通りの施工になっているかのチェックは出来ていないのです。
一方、建築家は建て主に代わって、施工に対しての外部者として「監理」を行ないます。
もちろん、建築家が工事監理に手心を加える理由はありませんので、工事に対する客観的なチェック機能が働き、工事のミスや手抜きを未然に防ぐことが可能になります。
なお、建築家で家を建てる場合の契約形態は、建築家と設計管理契約を、工務店と工事請負契約を別々に結ぶことになります。
3.契約は慎重に!
多くの住宅メーカーで注文住宅を建てられた方々からのよくあるトラブルです。ただ結果的には「あとに引けない状態での発覚なのでどうしようにもならないのですが・・・」
過去に住宅メーカーや工務店による設計施工で注文住宅を建てられた方からのお話をいたしましょう。
住宅展示場を見てそのモデル住宅を気に入ったAさん夫妻のパターンです。
営業マンの人柄の良さと、その住宅のデザインやセンスにあこがれ、いつの間にかその住宅メーカーの信者になってしまい「早くこんな家に住みたい」という想いだけが先行し視野が狭くなった結果、契約後に予想外の予算と現実とのギャップが生まれたという話です。
Aさんの計画は現地での建替えであったため土地の場所は早くから住宅業者に知れていたせいか、住宅業者の方はかなり頻繁に平面プランをもってこられました。提案されたプランに何度か修正をお願いしなんとか希望通りの間取りにたどりつかれたそうです。(ただ、あとで振り返るとあの程度の図面では大事なことは何も記載されていなかったことに気がつかれたとのこと)
「今月中なら安くできます」とか「この床暖房をサービスします」などという口車はあたりまえで、担当営業マンは「とにかく仮契約でもしてもらえませんか。」とAさん夫妻に決断をせまられたそうです。
提出された見積書は2、3枚の書面。その中には本体工事や諸経費、設計費、印紙代、別途工事費、オプション工事費までの記載項目があり、初めての家を買う素人目にはその書面に疑いも見せなかったそうです。
「モデル住宅のあの雰囲気になるのならまあいいか!」と契約書にハンコを押し、手付金100万円を支払いました。
その後、地盤調査や確認申請用の図面、の流れとなっていったのですが、話せば話すほどAさん夫妻が想い描いていたモデルハウスのものとはギャップが生まれるばかりで、仕舞いには思ってもいない柱が居間の端に構造体として必要だとのこと、キッチンやトイレの仕様や断熱材のレベルや種類、内装ドアやアルミサッシの内容までが契約時点の仕様と異なることがわかってきたのです。
さらに素人ではわからない基礎工事や構造の部分、断熱工法などの仕様は注文住宅のレベルでは考えられない施工レベルだったようです。
設計担当というデザイナーも実際会ってみると工務店社員の単なる間取り図面屋さんで、独自の提案も少なく、とてもAさんたちのための設計を行なってくれている感覚はなかったそうです。(無資格でした)
「あの段階で営業マンからいわれたサービスや値引きの内容も、あとで考えると、とりあえず私達に契約させるための口実であって、契約書に添付された見積書や図面は形だけのものだったのですね」とAさん夫妻。
結局、追加費用を余儀なくされ夢の妥協をし、「もっと、他の業者と時間をかけて比較すればよかった」と少々後悔されているようでした。
入居半年後にAさん夫妻と出会ったのですが、私の事務所の家づくりの流れや写真を見たり・コストを聞かれ、余計に後悔されたのがとても切なく思い出されます。
改めて我々、住宅設計を主とする設計事務所の特徴を抜粋いたします。
@依頼者から直接設計監理を委託される立場ですので施工工務店が特定されていません。
また工務店側からすると「業者主導で工事が出来ないため煙たい存在となります」
A30枚以上にもおよぶ詳細な設計図を元に数社の工務店から詳細な見積を徴収し、その見積内容を査定したうえで
予算調整を行ない、工事契約を結び、その支払条件まで過剰払いが無いように第3者的立場に入ります。
B競争入札をすることにより各工務店に競争原理がはたらき、それによる金額的効果は200〜300万円以上です。
(気になる工務店があった場合、その会社も含めて同じ詳細設計の条件で競争すれば一社だけの金額よりも
安くなることはよくある話です。)
C私自身は瑕疵担保保険の現場検査員としてさまざまな工務店の施工検査を行なっていますので、
デザイン重視の図面だけの設計事務所とは現場の工事監理のレベルが違います。(本当にここが大事!)
D施主が想い描く家づくりにさまざまなエッセンスを施し、本当の意味でのオリジナルな空間デザインがうまれます。
(単に奇抜な住宅という意味ではありません。)
E住宅メーカーの「当社だけのオリジナル建材です」といっても、実際には我々設計事務所にもそのルートはあるわけです。
手に入らない建材はほとんどありません。
契約してしまえば、あとには引けません。住まいを手に入れる方法に住宅設計の得意な設計事務所とつくる方法があることも検討されてはいかがでしょうか?
4.建築家とは?
「建築家」というのは俗称であり、正式な資格などを意味する言葉ではありません。ただし、役所に建築確認を申請するにあたっては、「建築士」という国家資格が必要ですので、建築家のほとんどは同時に建築士の資格を持っていると言えます。設計に携わる人たちの中でも、私たちが特に「建築家」という場合には、3つの意味がこめられています。
1つ目は、建物のデザインを重視していると言うことです。
ただし、ここでいうデザインとは「見た目」のことだけではなく、使い勝手や快適性に影響する「空間」デザインのことで、むしろ「空間」デザインが建築家のもっとも大切な職能ということができます。
「見た目」のデザインは、視覚的に空間デザインを補強するための一要素とお考えください。
2つ目は、施工から完全に独立していると言うことです。
ハウスメーカーや工務店の社内の一級建築士の場合は、工法や建材などを所属会社に合わせて設計しなければなりませんので、建て主ご家族のライフスタイルに合わせて制約なしに家を設計するということは実質無理があるのです。
また、監理の際に工事に対するチェック機能も働きません(これは住宅会社の場合、設計者よりも営業担当者のほうが社内的立場が上になるようですので設計者が工事現場に足を運ぶことはまずありません。)
例え独立して建築士事務所を構えている建築士でも、仕事が特定のハウスメーカーや工務店の下請けを主として事務所経営をしている場合も実質的に同じことといえます。
3つ目として、ほぼ住宅を専門にしているということが、家づくりにおける建築家の最後の条件になります。
設計の各分野はある程度は重複する部分もありますが、基本的には異なる技能といっていいでしょう。
住宅以外の設計者でも、図面を描くことそのものは可能ですが、住宅で使う建材、コスト、住宅に関する法律、住宅特有の細かい技術などはご存知ではありませんし、一般施主とのコミュニケーションなども苦手な方が多いでしょう。
特に、住宅設計は多くの要素を一人でこなさなければなりませんので、規模の小ささにもかかわらず独特の難しさがあるのです。
私も設計会社勤務の設計士の時代、病院や駅、マンション、工場などさまざまな建築物の設計をおこなってきましたが、独り立ちし住宅設計を主として1棟ずつ大切に設計していくと、住宅設計の奥の深さが改めて理解できてきた状況です。
5.建築家の仕事は?
(1)基本設計
設計契約を結ぶと、まず基本設計を行います。この基本設計の段階は、家づくりの中でも最も大切なプロセスといえます。
基本設計では建て主のご要望や土地の条件を踏まえて、コンセプトや間取り、イメージなどの家の概要(プラン)を提案します。
もちろん、そのプランで家を建てるわけではなく、これをたたき台に、建築家は時間をかけて建て主と話し合い、少しずつプランを修正しながら、建て主にピッタリ合う家に仕上げていきます。
最終的に建て主が、プランを了解すれば、基本設計は完了です。
(2)実施設計
基本設計で完成したプランをもとに、工事用の図面として密度をあげていきます。
ハウスメーカーや工務店が書く図面は10枚程度ですが、建築家の場合50枚以上の図面を書いていきます。(実際の契約時の図面を比較すると雲泥の差があります)
この段階でキッチンやユニットバスなどの住宅設備も候補を絞ります。また建具や家具なども造り付けなのか既製品にするのか、フローリングは無垢のどんな材種なのか色は、暖房機器や断熱材、構造材料、基礎鉄筋の構造強度、コンセントや照明器具の選択、外構工事や植栽の選定、など住宅に必要なもの全てについて施主と一緒に決めていきます。
その内容が全て設計図面となり契約書に添付される内容にしていくのです。住宅メーカーも「うちでも施主さんと一緒に同じことをやります」と言われても、その材料の選択肢や提案力、時間のかけ方が全く違うのです。
経費削減効率化を目指すためハウスメーカーの家はデザインの見た目こそ違えど、中身がほとんど同じなのです。ちなみに私の設計した住宅写真集をそういう目線で見てみてください。全て施主の要望を汲み取りながら完全オリジナルな家に仕上がっていることがお分かりいただけると思います。だから図面枚数が50枚以上にも及ぶのです。
(3)確認申請
建設予定地の役所に、その住宅が構造的にも防火的にも法律に適合しているかどうかを審査してもらい、建築の許可を得ます。
(4)工務店選定のお手伝い
最終的にどの工務店に工事を依頼するかは建て主が決めますが、建築知識をあまりお持ちでない建て主に代わり、建築家が代行します。
実施設計が終わり複数の工務店に見積もりを依頼する場合、建築家は各工務店から提出された見積書を詳細に検討し、その中から建て主にこれと思われる工務店を推薦します。
建築家は見積書を見れば、その住宅業者が図面の意味を本当に理解しているか、建築家の設計で工事をしたことがあるか、どのくらいの技術を持っているかなど、建て主にはわからない多くの情報を読みとることができます。
金額の安さだけで工務店を決めることは大変危険ですので、このようないろいろな要素を総合的に判断して、建て主に最終候補を推薦します。
(5)予算の調整
工務店から見積書が上がるまでは、その家の本当の値段はわからないわけですから、建築家は今までの経験からおおよそのコストを計算して、建て主の予算内に収まるように設計を進めます。
この時点で実際に見積もりを取ると、経験が豊富な建築家の場合は建て主の予算から1割増くらいの金額が工務店から提示されます。
その後、建て主と最終候補の工務店を交えて、超過した分を予算内に収める作業を行います。
(6)監理
設計と同じくらい大切な仕事が監理です。
監理とは、建て主が了解した図面通りに工事が行われているかを監視したり、図面に表せない細かい部分の仕上げ方などを工務店に指示する仕事です。
せっかくいい設計ができたとしても、マメで適切な監理をしないと、思っていたものと違う家ができてしまうことになります。
監理は、建築家が実際に現場に足を運んで行い、完成・引渡しまで続きます。
6.施工業者の選定はどうする?
ハウスメーカーや工務店の設計施工の家と違い、工事会社を自由に選べるのは、建て主にとって大きなメリットです。ここではどんな会社が見積りをしてくれるのかを説明いたします。
全ての設計図(50枚以上の図面資料)が完成したら、その内容に忠実に工事金額を算出してくれる工事施工者に見積依頼を出します。特命方式と競争見積方式の2種類がありますが競争についてお話します。
まず、設計された住宅の工法が建設可能な工事会社をリストアップします。(例えば木造軸組工法の設計なのに、セキス○ハウスやダイ○ハウスなどのプレハブ軽量鉄骨造のメーカーに依頼しても彼らには、施工は出来ません。シャー○ウッドなどの木造工法の商品を持っているメーカーでも自社の構造仕様通リに見積りが出来ないため無理な話となります。)
木造軸組工法が出来るハウスメーカーや工務店は広島市内にもたくさんあります。
・広島のハウスメーカー (トータ○・創建○ーム・山根木○・イワ○・共○ハウジング・・・)
・地元工務店 住宅展示場を持たない社員数10人程度までの工務店
・一級建築士事務所をもつ地元工務店 (自社設計・自社施工)
コンビニやスーパーの書籍コーナーで売っている「広島の注文住宅」という雑誌に掲載されている会社などはほとんど在来軸組み工法が可能でしょう。
施主のご希望があれば、これらの地元ハウスメーカーも競争見積りに参加させればいいのです。
私がいままでに設計した住宅ではいろんな競争見積りのメンバーを参加させています。
施主さまの両親の知合いの工務店や1人でこなされている工務店や大規模の住宅メーカーなどが同じ設計条件(50枚もの図面資料)で見積りを出された結果も実際にあります。
よく「相見積もりを取って比較するのがいい」と雑誌にも書かれていますが、簡単な間取り図と仕上げ仕様の図面で相見積りをとっても実際は比較ができないことがお分かりになられると思います。
もちろん、その会社の経営状況や、瑕疵保障の内容、建築家の設計した建物施工経験の有無、現場監督1人当たりの受持ちが多くないか等を加味して、コストの安い工務店に選定していくのです。
そして工事金額の支払い条件についても 超過払いにならないように、私たち建築家が施主の立場に立って決定した工務店と契約条件を折衝していくのです。
ですから、設計施工一式でいきなり契約を急がれるハウスメーカーや工務店直接契約とは、最初の契約時期が大きく違うのです。
一般的にハウスメーカーや工務店直接契約の場合、契約時に10%(約200万円)の契約金を支払ってから詳細設計に入られます。(後戻りできない仕組みになっていますので、契約後に話が違う、あれもこれも別途工事でイメージも納得いかないとなる方々もおられるようです)
我々建築家との流れならば、設計委託契約金の支払いは設計完了時点でも数十万から100万円程度の出費で済むことが多いのです。大きな工事金の契約は時間を使ってじっくり決定できるのです。
7.広島にいる建築士たち
・広島市内に1級建築士の資格を持つ人数は…約○○○○ 人
・設計事務所の数は…約○○○社
・住宅の設計ができる設計事務所は…約○○○ 社
・その中で木造住宅の設計がまともにできる設計事務所は…約○○社
・さらにその中で業者からの下請けではなく、建て主から直接委託され注文住宅を設計監理した業務を中心にしているのは…約○○社
・またさらにその中で建て主の建てたいイメージを総合的にデザインよくまとめれるのは…約○○人
素人の方からすると「えーっ!!」そうなの?という感じかもしれません。かっこいい職業のようにも思われがちですが、一匹狼的な考え方で建築設計をしている人たちは意外と大変なのです。
何が大変って。営利目的での住宅営業をしてないからです。最近はホームページなどで設計作品などがみなさんの目にとまることも多くなりましたが、まだまだ知名度など上がってはいません。
私たちに依頼される方々は、建てられた施主の紹介や建てた建物をみて探しあてられた。などがほとんどのようです。
8.一級建築士でも木造住宅の設計を知らないという事実
一般に一級建築士というと、ビルからなにから何でも設計できるすごい資格だ。と思われる方々も多いと思います。確かに法律的には何でも設計してもいいことになってます。
ただ、残念ながら一級建築士で現行法の木造住宅の構造基準に即した設計ができる建築士は多くありません。なぜなら、高等学校でも大学でも建築学科を出ても木造のことは学ぶ機会が無いのです。また学校ではコンクリートや鉄骨のことばかりで木造のことは概略だけで実際に施工されている現代木造工法など教えれる先生方も少ないようです。
もちろん私もそうでした。大手の設計事務所勤務の時代も木造住宅など儲けにもならないとビルの設計ばかりでしたし。(1級建築士をもっていても従兄弟の住宅相談に乗ってあげれなかったこともありました)
では数少ない木造住宅の建築家たちはどうやって学んだのでしょうか?
私が設計会社を退社後、独立したのは2002年5月です。阪神淡路大震災以後、木造住宅の設計基準が大幅に改正されたのが2000年です。この大改正(住宅の品質確保に関する法律)の施行後、木造住宅の基準や工法について住宅現場や第3者検査を通じて独学で学んでいきました。
基本が理解できているので独学といっても建築学的には通じる部分も多いので習得も早かったと感じます。
ただ、木造という工法は、やればやるほど奥が深いのです。(何故なら木材は生きていますから)
そこに木造住宅設計の面白さがあり技術者としてじっくり家づくりがしたいのです。
(だから、施工側を主とした営利目的の工務店やハウスメーカーの設計と明らかな差があるのです)
9.大手ハウスメーカー
ハウスメーカーとは、ある作り方、あるデザイン、ある寸法の住宅を国から一括して許認可を受け、その範囲の中で家を組み立て住宅をつくる会社をいいます。
規格化によって、一棟一棟の住宅の許可を簡略化でき、またあらかじめ部材を大量に仕入れ・前加工することが可能なため、大幅なコストダウンを図ることができます。
実際に建てるのは地元の提携工務店で、そのハウスメーカーの「組み立て方」に慣れており、いちいち見積りを詰めたり技術指導をする必要がないため、工事も効率よく進みます。(工期も3ヶ月もあれば出来てしまいます)
だから現場には監督さんはほとんど存在せず、いたとしても建築素人の若い社員が何十棟もかけもちしながら、材料の手配のみを行ないます。
細かい仕様はあらかじめ決まっていますので、部屋のレイアウトが決まれば、後は短期間で自動的に家が建つわけです。施主との打合せは、これまた建築素人で自社の製品のみを勉強した営業マンがマニュアルにそって、淡々と打合せをしていきます。(営業マンも建築素人の場合がよくあります)
よく、ハウスメーカーで建てた方に「なぜ、このメーカーにしたのですか?」と聞くと「営業の方が熱心に来られてねえ」とか「やっぱり大手のメーカーだから」とか「あの人何でも任せてくださいっていうから、めんどくさくなくって」など車を選ぶかのように決められたといいます。
一生に一度の大きな家族プロジェクトを人任せにされますか?
間取りのちょっとした変更やキッチンメーカー、壁紙やフローリングをちょっと自由に選んだだけで、満足した家が建つのでしょうか?
また、ハウスメーカーは大量に住宅を売ることを前提としたコスト構造を持っており、結果として大量に売るための広告費や販売促進費、展示場の建設・維持費用、営業マンの人件費が実際の住宅のコストに大きく上乗せされています。
公表されている資料によると、建て主が払う価格のうちで実際の住宅のコストは58%であり、利益を除いた他32%がこれら次の人に売るための費用に使われています(住宅産業研究所・有価証券報告書より)。
大手ハウスメーカーの実質の経費は契約工事金額の45%から55%になっているのです。(ただし実際に皆さんに提示されている見積上はそんな数字はどこにも見当たりません。)
よって、元のコストが大変安価なのにもかかわらず、最終的に支払う価格は、期待されるほど安くないというのが現状です。(そうでないと、本社経費、社員の給料、宣伝広告費、住宅展示場経費、工場経費など確保できるわけがありません。)
家づくりは本来1人の棟梁が関係工事店と一緒に造っていくのに、それを取り巻く建設会社や工務店、ハウスメーカーの規模が大きくなればなるほど、住宅本体に使われない「経費率」が大きくなるのです。
10.工務店にもいろいろあります
私たちがお施主さまと綿密な打合せのもとに作った設計図も施工業者無しには実現できません。
建築家はあくまでも工事を請け負わない専業の立場であるため、工務店とのつながりは いわゆる「ひも付き」になってはいけません。ですから私たちは常に「まっとうな施工能力を持つ優秀で安価な工務店」との出会いを探しています。
工務店といってもまた、施工を実作業として仕事をするのではなく、大工さんや板金屋さん、設備屋さん電気屋さんなど下請け業者が施工を行なうのです。よって「腕のいい大工さん」等を持つ工務店さんが建物の良し悪しに大きく関係します。
現代の木造住宅の施工は現場でのカンナ掛けやノミでの穴明けなどは無く、プレカットされた木材を木組み通りに組み立てるといった作業が主となっています。ですから高度な技術を持つことなく棟梁としてやっている大工さんも多く存在しています。建売住宅やハウスメーカーの住宅などは、ほとんどがこういった大工さんたちの手で組み立てられています。
もう一つ大事なことは「現行の建築基準法を遵守した木造住宅の知識を持っている工務店か」です。
現行の木造住宅の法律は近年大きく進歩し、また構造的に複雑になっています。2000年の「品確法」や2004年の改正建築基準法、2006年のシックハウス法、2009年の住宅瑕疵担保履行法など、木造住宅を取り巻く法律は年々厳しくなってきています。
ある施主さんから調査依頼を受けた内容ですが、軟弱地盤の土地なのに地盤調査も行なわず基礎工事を完成させた現場がありました。工務店側の言い分は「軟弱な地盤の土地だからべた基礎にしました・・・・・・」とのこと。 数年前なら施工者判断でどこも行なわれていたことなのですが、現行の法律ではNGなのです。
工務店の社長いわく「知らなかった。」と否を認め、その基礎コンクリートは全て解体撤去されました。
私は毎回いろいろな工務店さんや大工さんと家づくりをしていますが、年配の職人さんや昔ながらの工務店さんたちは「俺はいままでこのやり方だ」とかで近年の施工基準を知らない方々が多いのも痛感しています。
リフォーム業界ではさらにひどい場合もあります。
リフォーム工事は請負金額が500万円以下ならば、建設業の許可も必要なくだれでも工事が可能です。
またリフォームの場合はたいがいが建築確認の許可を得ずに工事をすることもできます。
ですから、現行法の施工基準を知らなくても業者としてやっていけるという怖さがあります。役所の検査が無い世界ですから図面もほとんど無くリフォームしながらその場対応で工事を進め、設計監理者のいない現場では即座に隠してしまうといったことも事実あるようです。(あくまでも極一部の工務店さんの例ですが・・・)
設計事務所の建築家が偉いという意味ではありません。知識的に新たな構造技術や環境知識、法律等を身近に業として学ぶ機会が多い立場にあるだけなのです。私たちは逆に現場の大工さんや職人さんから、図面上では気づかない納まりや施工詳細を教えてもらっています。
私たちは、常に良い家づくりとなるように、施主・設計監理者・工務店・大工さんとが三位一体で施工ができる工務店さんとの出会いを求めています。
11.自由設計とは
ハウスメーカーの場合は、設計の自由度が大幅に制限されるということです。
例えば、あるハウスメーカーが階高を2.4〜2.6mで認可されている場合、この範囲であれば建て主の要望に応えられますが、2.8mにしたい場合には対応できず、対応したとしても建材を特注し、また個別の許認可が必要になるために、急にコストが上がってしまいます。
多くのハウスメーカーが「自由設計」と謳っていますが、ハウスメーカーという業種である以上、必ず「決められた範囲の自由設計」であることには変わらず、あくまでも最大公約数的な家になってしまいます。
例えば、三角地に住宅を建てようとする場合、ほとんどのハウスメーカーは、その内側に入る四角い家を提案してきます。
そうなると、例え間取りが自由にできたとしても、土地の欠点を毎日意識しながら生活しなければなりません。
規格住宅であるハウスメーカーの家は、規格を外れて形が複雑になると急にコストが高るという特徴があるため、都市部のように土地が狭くて形が悪く、住宅の形が複雑にならざるを得ない土地に建てる場合は、低価格の魅力が失われて行きます。
一方、建築家の家は、もともと雛形やコスト削減要因があるわけではないので、形が複雑になっても、それにかかる材料費、手間賃が足されるだけで、それ以上のコストアップにはなりません。
もっといえば、20坪以下の狭小住宅で、さらに土地が三角地ともなれば建築家の方がはるかに安く建てることが可能です。
また値段を考える上でもう一つ重要なことは、物の値段は常にその価値に対して計られるということです。
ハウスメーカーの場合、価値が高い低いということは、建材や設備が高い安いということとほぼ一致します。
一方、建築家で建てる家は、それぞれの家族にピッタリ合うことが一番の価値であって、建材や設備の価値とは必ずしも一致しません。
例えば、床面積は同じであっても、その家族にとって無駄なスペースがないということは、必要な部分をより広くできるわけで、それ自体で価値が高いといえます。
建築家で建てる家は、違う家族から見ればしっくりとこないかも知れないけれど、その建て主にとっては体にピッタリとなじんでお金では換算できない価値がある家であり、床面積や価格だけでハウスメーカーの家と単純比較することは難しいといえます。
もうひとつ、自由設計とうつ中小工務店の場合はこんなことが考えられます。
もともと在来軸組み工法の建売住宅仕様程度の住宅を主として施工されている工務店の場合、その自由設計の中身にも技術的・設計能力的に限界があります。営業マンは契約を取りたいために「どんな希望でもお任せください」と意気込みますが、経験したこともない敷地形状や工法や建物の形状、材料を施主から渡されても、どうすればいいかわからないのは当然です。自社の設計スタッフといっても単にいつもの工法でつくる間取り図面担当などにできるわけもないし。
そんなときに私たち設計事務所に依頼される場合がよくあります。ただしここで注意したいのが、その設計事務所が工務店の下請けとして設計するのか、施主を紹介いただいて施主との間に設計監理委託契約を結んで設計をするのかで大きな違いがあるのです。私も経験があるのですが、工務店の下請けで設計だけの場合、施主との打合せや仕様決めの際に必ず工務店の担当者がついてきます。お金をいただくのが工務店からであれば、私たちも施主に対して公平に対応できかねることになるのです。